シンプルな提案の組み立て方 実践編 対面の場合3
「提案相手」と対面の状態で、どのようにして提案をしていくのか。それは「満足」「問題」「期待」「不安」の4つの要素で考えシンプルに組み立てます。提案術の実践編 対面の場合の第3回目です。
今回から「 現状 」とそれに対する「満足」「問題」についてそれぞれ考えていきます。先に「満足」について話を進めて参りましょう。
実はこの「満足」の扱いは一番難しいのですが、成功すると一番効果的な提案が成功します。つまり「満足」を上手に活用すると大きな「期待」につながる可能性もありますが、失敗すると「不安」を大きくしてしまいます。ではこの「満足」をどのように取り扱えばよいのでしょうか?
それは次の二つです。
1.「満足」に存在する潜在的な「問題」のタネを自覚してもらう。
2.「提案内容」実施後も継続あるいは増大する「満足」を明示する。
の2点です。特に1が難易度の高い作業となります。本日は1について進めて参りましょう。
以下の中小企業の社長とその友人の会話をご覧ください。
社長「最近売り上げが下がってきていて、このままだとまずいと思ったから新し
い製造機械を購入したんだ。お陰で品質が向上して注文が前年比130%に
することが出来たんだ。」
友人「それは良かったね。」
社長「ところがそうでもないんだ。生産が注文に追い付かなくて、このままでは
二人しかいない従業員に毎日遅くまで残業させることになる。さすがに労
務管理上問題があるからね。」
友人「確かにそうだね。それでどうしたの?」
社長「もう一人新たに従業員を雇うことにした。これで無理な残業は解消できた
よ。」
友人「これで解決だな。」
社長「いやそれが、人件費が1.5倍になったため折角の売り上げ上昇がそれほど
利益に繋がらなくなってね。」
友人「そうか。それでどうしたんだ?」
社長「もう1台製造機械を買ったよ。」
友人「・・・・・。」
社長の立場で考えますと、「問題」が起こると解決のために行動を起こし、それがまた新た「問題」を生むと感じているかもしれません。しかし、少なくとも注文数が前年比130%になった時点で、従業員の労務管理、人材確保、人件費等の「問題」は予想出来た内容です。ただ実際にその時点で起こっていなかった「問題」、つまり潜在的な「問題」のタネとして存在していました。
「満足」している状態は「問題」は顕在化していないですが、それは「問題」が存在していない状態とは言い切れません。潜在的な「問題」のタネに気が付いていない可能性もあります。「提案相手」が潜在化している「問題」のタネに気が付き、それを解決したいという欲求にかられ、「提案者」がその「問題」のタネを事前に解決する「提案」を行えば、それは大きな「期待」へと繋がります。しかし「提案者」が先にそこに気付き、その「問題」のタネを指摘することは、状況によっては非常に難しい場合があります。「提案相手」からすると「せっかく上手く行っていることに文句をつけている」ことになりかねず、素直に受け取れない事にもなります。ですので、「提案相手」に自ら気付いて貰うことが大事になります。
ではどのようにして「問題」のタネに気付いて貰うのか。そこで必要になってくるのが「質問」のスキルです。「提案者」が「提案相手」の「現状」とその「評価」を聞いている中で、「提案相手」の見方を変えるような質問をして、「問題」のタネの存在を暗示させるような方向に会話を進めていきます。
例えば、先程の社長に注文数前年比130%が見えてきた時点あるいはその前に「30%アップの生産体制をどのように築いていきますか?」という質問が周りからあれば、社長は「問題」のタネに気付き、それを解決しようという欲求から「提案」を受け入れやすい状況になっていたかもしれません。他にも業績が良い部署のワンマンタイプのリーダーに「あなたは部署のメンバーからどう思われ、何を残したいと思いますか?」とか、ニーズが明確にならない顧客に「○年後、あなたはどのような生活を送っていたいですか?」等の質問がこれにあたります。
そのような質問で、「足りないもの」「変えたいもの」「要らないもの」等がイメージ出来てきたら、「現状」と比較することにより、「問題」のタネを暗示させることが容易になってきます。しかもそれは「提案相手」が気付いたものになるわけです。
「提案相手」の見方を変えるような質問にはいろいろな手法がありますが、一番わかりやすいのは状況を変える質問です。例えば、「では、5年後はどうですか?」と言った時間を変える質問や、「○○さんはどのような評価をしていますか?」と言った人を変える質問、「○○が起こったときにはどのようにしますか?」と言った特定の状況を示唆する質問等、「提案相手」からするとある意味想定されていない状況を設定することが分りやすい実践例です。しかしこの場合注意しなければならないことは、現実味の乏しい状況では説得力を持たないという事です。例えば新しい機械などの購入の際に「5年後」と「50年後」では全く意味が違ってきます。「5年後」の問題であれば考慮する必要を感じるかもしれませんが、「50年後」の問題をどこまで考慮するのかは疑問です。「質問」のスキルを上手に使うことによって「提案相手」が自身の状況を俯瞰できれば、「問題」のタネが顕在化されるかもしれません。
今回は「質問」のスキルを使い、 【「満足」に存在する潜在的な「問題」のタネを自覚してもらう】ためのアプローチについて話を進めて参りました。次回はもう一つの、 【「提案内容」実施後も継続あるいは増大する「満足」を明示する】について進めていく予定です。
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